[Back][Top][Next]
座談会 <出席者>
C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療
−患者個々に応じた治療戦略−
熊田博光 氏 虎の門病院副院長 消化器科部長(司会)
西口修平 氏 大阪市立大学 肝胆膵病態内科学 助教授
橋本悦子 氏 東京女子医科大学 消化器病センター 内科講師
芥田憲夫 氏 虎の門病院 消化器科現在、欧米ではペグ・インターフェロン(PEG-IFN)とリバビリンの併用48週間投与がC型慢性肝炎の標準治療となっており、わが国においても近い将来、Genotype1b高ウイルス量症例に対する第一選択になると考えられます。しかし、わが国では60歳以上のC型慢性肝炎患者が非常に多く、治療法の選択にあたっては副作用についても充分な注意が必要となります。そこで今回は、わが国におけるC型慢性肝炎に対する治療戦略について、有効性と安全性の面からご討論をお願いしました。
熊田 本邦では、1992年にC型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)治療が認可されて以来、長きに亘ってIFN単独療法が行われてきました。しかしGenotype1b高ウイルス量症例に対する有効性が低いことなどから、2001年12月にはIFNα2b リバビリン併用療法24週間投与と、コンセンサスIFN(IFNαcon1)が認可されました。しかしそれでもなお、Genotype1b高ウイルス量症例における著効率は約20%です。また、2003年12月にはPEG―IFNα2aが認可されました。PEG―IFNα2a単独による治療は週1回の投与が可能なため患者のQOLは改善しましたが、著効率が向上したわけではありませんでした。
一方、欧米では2年以上前からPEG―IFN リバビリン併用48週間投与が標準治療となっています。本邦においても、最近、PEG―IFNα2bとリバビリンの併用48週間投与の治験成績がまとまりました。
そこで本日は、こうした状況を見据えながら、C型慢性肝炎治療の今後と課題について、討論したいとと思います。Genotype1b高ウイルス量症例に対する治療戦略
■PEG―IFNα2b・リバビリン併用療法の著効率は47.6%
熊田 まず、本邦で行われたPEG―IFNα2bとリバビリン併用48週間投与の治験に参加されての感想を伺いたいと思います。
西口 Genotype1b高ウイルス量症例に対し、PEG―IFNα2b リバビリン併用48週間投与では、著効率が約50%と従来のIFNα2b リバビリン併用24週間投与と比較して非常に高く、今後十分に期待がもてる治療法だと考えています。
橋本 私も極めて有効な治療だと思います。しかし、PEG―IFNはその作用が1週間持続するということから安全性面に注意が必要であり、さらにリバビリン併用によって副作用も増えるので、わが国に多い高齢患者や肝硬変など肝障害の進行例には、あまり適さないと思います。
熊田 治験の最終報告をみますと、Genotype1b高ウイルス量症例における著効率はPEG―IFNα2b リバビリン併用48週間投与で47.6%、IFNα2b リバビリン併用48週間投与が44.8%と両群間に有意差はなく、この数字は欧米のデータとほぼ同じです。今後本邦でもPEG―IFNα2b リバビリン併用48週間投与が認可されれば、Genotype1b高ウイルス量症例に対する第一選択になると思います。■リバビリン併用療法の安全性
熊田 ところで、IFNα2b リバビリン併用療法において問題となるのが、橋本先生がご指摘された副作用と現在増えている高齢患者(図1)への適応です。その点はいかがでしょうか。
西口 現在、多くの病院でIFNα2b リバビリン併用療法が行われていますが、副作用による減量や中止が問題になっています。我々の関連病院のデータをまとめますと、脱落率は全体で約30%、65歳以上では約35%となっており、脱落した症例の著効率は非常に低くなっています。なお減量した理由のほとんどはヘモグロビン値の低下です。また中止の理由は、その3分の1はヘモグロビン値の低下(8.5g/dL以下)、もう3分の1が全身倦怠感、残りの3分の1がうつをはじめとした諸々の副作用によるものです。
![]()
橋本 当院の脱落率も30〜40%で、その理由としては、血液検査では溶血性貧血が最も多く、次が白血球減少。自覚症状としては全身倦怠悪やうつ症状がつらくて治療の継続が不可能になった症例が多いです。
芥田 当院での脱落率は約15%で、減量を含めると約30%です。副作用としては、やはり溶血性貧血が最も多く、次が白血球減少。症状的には全身倦怠感です。
熊田 そうすると、どの施設でもIFNα2b リバビリン併用療法では30〜40%が副作用で脱落あるいは減量しているということですね。重篤な副作川としては、突然死や脳出血の報告がありますが、当院でも併用療法開始2ヵ月目に脳室内出血を起こした症例(43歳男性)を経験しています。このような重篤な副作用は経験していますか。
橋本 当院ではIFNα2b リバビリン併用24週間投与治療のスタートが少し遅かったため、既に重篤な副作用症例の情報が他施設から入っていました。そのため慎重に投与していたこともあり、重篤な副作用は経験していません。しかし、ストレスによる突発性難聴から右の聴力を失った症例を1例経験しています。
西口 私どもは軽い麻痺が残った脳出血1例と死亡1例を経験しています。脳出血例は高血圧も糖尿病も合併していませんでした。また死亡例の死因は重症膵炎でしたので、IFNα2b リバビリン併用療法との因果関係は不明です。
熊田 IFNα2b リバビリン併用療法においては2003年に「安全使用の手引き」が出され、IFNα2b リバビリン併用療法を行うに際し、通常以上に慎重な観察のもとで投与を行う症例を、@65歳以上、Aヘモグロビン値13g/dL以下、B基礎疾患として高血圧症、糖尿病を合併している人、C体重40kg以下、としています(図2)。それ以降は重篤な副作用減っているように感じています。■リバビリン併用療法の中止例に対するIFNβ治療
熊田 次に、副作用によってIFNα2b リバビリン併用療法を中止せざるを得なかった症例に対する治療についてお話を伺います。
橋本 私たちは、副作用によってIFNα2b リバビリン併用療法を中止した患者のうち、併用療法中にHCV―RNAが陰性化した症例に対して、陰性化を約2年間維持することを目的にIFNβの長期投与に切り替えることで良好な結果を得ています。併用療法中止時にHCV―RNAが陰性化していた6症例は、IFNβの継続投与により、4例が著効、2例が治療中ですがウイルス陰性化を持続しています。一方、併用療法中止時に陰性化がみられなかった1例については無効でした(図3)。
![]()
IFNをα2bからβに変更した理由は、中止例の多くにうつ症状がみられたことから、うつ症状の副作用発現が少ないβなら治療を継続できると考えたためです。変更によってうつを含めた副作用が軽くなっており、またIFNβ治療時の中止例はありません。
西口 IFNα2b リバビリン併用療法中止例では著効率が大幅に落ちますので、橋本先生が言われたように、たとえ併用療法を中止しても最後までIFN治療を継続することが、最終的なウイルス消失につながると考えられます。
また、私たちはIFNα2b リバビリン併用療法開始2週目でHCV―RNA陽性の症例に対し、4週目からIFNβ リバビリン併用療法に切り替える試みをしています。IFNβとリバビリンを併用した症例では、全身倦怠感などの副作用が軽く、12例全例で投与を完遂できました。有効性についても難治例であるにもかかわらず現時点で7例中2例が著効に至っています。将来的に、安全性と治療効果を踏まえた治療法としてIFNβ・リバビリン併用療法に大きな期待がよせられます。注:本使用方法はIFNβ「フェロン」の承認外です。効能・効果、用法・用量を含む使用上の注意点につきましては、製品添付文書をご参照下さい。
■併用療法の適応基準外症例にはIFN単独長期投与
熊田 先にIFNα2b リバビリン併用療法において特に慎重に投与すべき症例の条件について示しましたが、これらの症例に対しての治療はどのように行っていますか。
芥田 肝障害が進行している症例は肝細胞癌になりやすいので、高齢患者であってもできるだけ著効を目指した治療を行いたいところです。当院では安全性を考慮してIFNの単独療法を選択しています。
さらに当院において以前まとめたIFN長期単独療法のデータでは、IFN投与初期の8週間(連日)以内でHCV―RNA陰性化が得られた症例に、その後約2年間IFNを投与したところ、陰性化が続けば約73%(30例/41例)の著効率が得られています。
熊田 本邦では2002年2月にIFNの投与制限が撤廃され長期投与が認められましたが、Genotyp1b高ウイルス量症例において、そのメリットは生かされているのでしょうか。治る症例、治りにくい症例をある程度のところで見極めていくことになろうかと思いますが。
西口 例えば、IFN投与開始4週目にHCV―RNA陰性化が得られた症例を対象に、24週間投与と48週間投与における治療終了後の再燃率を比較すると、48週間投与では再燃率は24週間投与の約半数になっています。従って48週以上の長期投与によって、著効率がより高くなる可能性は十分に考えられます。ただし、治療開始4週目で陰性化しない症例には、長期投与によるメリットは少ないと思います。
熊田 欧米では、PEG―IFN リバビリン併用療法で治療開始12週目始以降に陰性化した症例でも著効の可能性があるといわれていますが、IFN単独療法では4週目が目安になりますか。
橋本 当院では12週目に陰性化した症例が、その後の長期投与で著効したという経験がありますので、IFN単独療法においても2年間の長期投与を行えば、8〜12週目に陰性化した症例でも著効する可能性はあると思います。低ウイルス量症例に対する治療戦略
■IFN単独短期(18週間投与)療法を中心に
熊田 次に、低ウイルス量症例に対する治療の実際についてお話を伺います。
芥田 Genotype2a低ウイルス量症例に対する当院の成績(394例)をみると、24週間のIFN単独療法で約86%(127例/148例)、8週間の投与でも約70%(29例/42例)の著効率となっています。また、治療開始2日以内にウイルスが陰性化した症例では100%(14例/14例)、1週間で陰性化した症例では約85%(29例/34例)の著効率が認められていますので、2日以内に陰性化した症例は8週間の単独療法でも十分効果が得られると考えています。一方、1週間で陰性化した症例は、24週間投与で約85%(29例/34例)の著効率が認められますが、8週間投与では50〜60%に低下します。
治療開始1週間以内に陰性化が認められない症例には24週以上の長期投与が必要であると思われます(図4)。
![]()
熊田 初回治療で陰性化したが治療終了後に再燃した症例には、どのような治療を行っていますか。
橋本 年齢を考慮して、65歳以上の高齢者にはIFN単独長期療法、65歳未満の場合はリバビリン併用療法が第一選択になると考えています。
西口 リバビリン併用療法の選択にあたっては、年齢と共にクレアチニン クリアランスを考慮する必要もあると思います。Genotype2a/2b高ウイルス量症例に対する治療戦略
![]()
■副作用と冶療期間を考慮してIFNを選択
熊田 次に、Genotype2a/2b高ウイルス量症例に対する治療について伺います。治験デーダをみますと、IFNα2b リバビリン併用24週間投与で約70%、PEG―IFNα2a単独48週間投与で約約70〜80%、コンセンサスIFN24週間投与で約70%の著効率がみられますが、年齢や症状などの条件を考えない場合、先生方はどのような選択を行っていますか。
橋本 IFNα2b リバビリン併用療法が第一選択で、次がコンセンサスIFNによる治療です。
西口 当院では、副作用と治療期間を考慮してPEG―IFNα2bあるいはコンセンサスIFNを選択します。
芥田 私もIFN単独療法が第一選択です。
熊田 専門医の間でも意見が分かれますが、西口先生がご指摘のように副作用と治療期間の兼ね合いで選択しているのが現状のようです。高齢者患者に対する治療戦略
■PEG―IFNα2aの利便性と安全性
熊田 次に、65歳以上の高齢者に対する治療についてお話を伺います。まず、IFNα2b リバビリン併用療法の適応についてどのようにお考えですか。
橋本 基本的には65歳までの方に対してリバビリン併用療法を行っています。しかし、元気な方にはもう少し高齢でもIFNα2b リバビリン併用療法を行うケースもあります。
西口 私も65歳を基準にしていますが、腎機能が正常の方ではもう少し高齢者まで考慮しています。
熊田 PEG―IFNα2aの投与についてはどのように考えていますか。
西口 週1回の投与で済むという利便性と投与開始時の自覚症状的な副作用が軽いという印象から、高齢の患者にも投与しているケースがありますが、血中濃度の維持が非常に長いため投与量は少し抑えています。
芥田 当院ではPEG―IFNα2aの投与を20例経験していますが、6例が脱落しており、うち4例が60歳以上です。脱落の原因は血球減少(2例)、気管支炎(1例)、狭心症(1例)であり、高齢者には少々危険な面があるように感じています。
熊田 治験では65歳以下を対象としていますが、日常臨床においては65歳以上の患者さんもたくさんいる、ここが問題ですね。■高齢患者には安全性を考慮してIFNβ
熊田 ところで、高齢者はうつになりやすいといわれていますがその辺はどのように考慮していますか。
橋本 高齢者の場合はうつになりやすいので、65歳以上の患者さんにはIFNβを主体にIFN少量長期投与を行っています。
熊田 IFNαとβでは副作用の特徴が大きく異なりますが、最も異なるのがうつの発現率ですね。安全に使うことを考慮すると、うつ傾向がある、あるいはうつになりやすい患者さんには、やはりIFNβが第一選択薬になります。西口先生はIFNαとβにおけるうつ症状の発現についてどのような印象をお持ちですか。
西口 当院でもIFNβのほうがうつ症状が少ないという印象を持っています。また、IFNαは発熟などのインフルエンザ様症状が解熱剤投与後24時間でも持続するケースが多いのですが、IFNβでは一時熱が下がっても解熱剤投与後3時間もするとインフルエンザ様症状はほとんどみられません。こうした身体的ストレスの視度の程度の差も、うつの発現に影響しているのではないかと思います。肝発癌抑制を目指したIFN少量長期投与の安全性と有効性
熊田 冒頭に論じたようにGenotype1b高ウイルス量症例の治療は、将来的にはPEG―IFN リバビリン併用療法が第一選択になると思いますが、それでも著効率は約50%であり、残り50%にはIFNの長期投与が必要となります。一方、PEG―IFNα2aは2004年4月に適正使用情報が出されているように、投与40週以降に急激な血小板減少がみられ、その中に抗血小板抗体の発現が確認されています。また、好中球の減少、ヘモグロビン値の低下、さらに脳出血なども報告されています。つまりPEG―IFNα2a48週以上の長期投与による安全性はまだ確認されていないわけです。こうした現状の中では従来の長期投与を選択すべきと思われますが、いかがでしょうか。
西口 当院では肝硬変の患者さんにIFNβの少量投与を1年間行い、自覚症状もなく、非常に安全に使えた経験があります。IFNβ長期投与の安全性に関しては、かなり高いものだと思われます。
また、慢性肝炎についても私たちは過去に、IFN治療で著効に至らず肝機能異常が持続しているGenotype1b高ウイルス量症例に対して、IFNβを用いた少量長期投与を行っています。具体的には一日1MIUを2週間連日投与後、週3回投与を48週間継続したところ、自覚症状はほとんどなく、8例中6例において投与中にALTの正常化が認められました(図5)。
![]()
このように週3回の投与でも肝機能の正常化を維持でき、かつ高い安全性が認められていますから、その意味でIFNβ週3回48週投与も一つの選択だと思います。
注:本使用方法はIFNβ「フェロン」の承認外です。効能・効果、用法・用量を含む使用上の注意点につきましては、製品添付文書をご参照下さい。
熊田 近年、C型慢性肝炎における肝細胞癌の発生率は高齢者においても非常に高いことがわかっています(図6)。
![]()
虎の門病院ではIFNの発癌抑制に関するデータがありますが、どのような結果でしょうか。
芥田 Genotype1B高ウイルス量症例でIFN治療によって著効に至らなかった症例にその後IFNをあるインターバルをおいて何回も繰り返して治療することで、発癌率が下がり、生存率が向上するという結果が得られています。また、単発癌切除後にIFNβを週2回、3〜4年の長期投与を行ったところ、非投与群に比し明らかな肝癌再発抑制効果が認められました。この結果来はまた、IFNβの長期投与における安全性を証明したデータでもあると思います。総括
■患者個々に治療戦略を立てることか大切―ウイルスタイプ 量、年齢、患者さんの身体 精神的状態を考慮して
熊田 本日の話をまとめます。
まず難治性であるGenotype1b高ウイルス量症例に対する治療は、近い将来認可されるPEG―IFNとリバビリンの併用療法が第一選択になると思われます。現段階ではIFNα2b リバビリン併用療法がありますが、リバビリンの適応に関しては副作用懸念の観点から適応基準の条件があります。そこで、併用療法の適応基準外症例に対してはIFN単独療法を選択し、連日投与によって8〜12週までにHCV―RNAが陰性化した症例には、その後1〜2年の長期投与を継続します。一方、8〜12週で陰性化しなかった症例に対してはPEG―IFNα2aの長期投与が望ましいのですが、1年以上の長期投与における安全性がまだ確認されていない現状では、うつなども考慮した場合、IFNβの少量長期投与が最も望ましいと考えられます。
低ウイルス量症例の初回治療は、IFN単独療法が第一選択であり、投与後2日で陰性化した症例においてはIFN単独8週間投与で十分です。一方、治療開始1週間以内に陰性化しない症例については、24週間以上の長期投与が望ましいでしょう。再治療例に関しては、65歳以下の症例にはIFNα2b リバビリン併用療法を行い、高齢者には安全面を考慮しIFN単独による、より長期の治療を行います。
Genotype2a/2b高ウイルス量症例に対しては、統一の見解は出ていませんが、IFNα2b リバビリン併用の24週間投与、PEG―IFNα2aの単独48週間投与、コンセンサスIFNの単独24週間投与で、ほぼ同等の有効性が認められているので、薬剤の副作用と投与期間を考慮して選択を行います。
高齢者でもある程度治る見込みがあるという人は、安全性の高いIFNβを主体に使っていくことが望まれます。発癌与防にもIFNの少量長期投与が有効でありますが、PEG―IFNの安全性が確立されていない現状では、うつ症状などを考慮すると、IFNβの少量長期投与が望ましいと考えられます。
このように、治療の選択肢が豊富になってきた今日、治療法の選択にあたっては、その有効性と安全性を十分考慮し、治せる可能性のある患者さんはきちんと治すことが重要です。一方、治らないことがわかった時点では、あまり無理をしないで発癌予防に徹していくべきだと考えられます。
本日はありがとうございました。
※この稿は、日経メディカル2004年7月号広告記事より許可を得て掲載しました。