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C型慢性肝炎に対する最善の治療法を考える
林 紀夫 氏(司会)大阪大学大学院 医学系研究科 分子制御治療学教授
熊田博光 氏 虎の門病院 副院長
豊田成司 氏 札幌厚生病院 副院長

C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)α-2b+リバビリンの併用療法が導入され、難治性といわれるジェノタイプ1bで高ウイルス量の症例においても著効率が改善しつつあるが、まだ満足できる効果には達していない。また、高齢患者の多い日本の臨床診療は、副作用を回避しつつ治療効果を最大限に引き出すという困難な課題にも直面している。そこで現在のIFNα-2b+リバビリン併用療法の評価を踏まえ、その有効性をさらに発揮させる治療法について、C型慢性肝炎治療の専門家3氏に話し合っていただいた。

IFNα―2b+リバビリン併用療法の効果

 C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)治療が日本で始まったのは1992年ですが、その後、欧米、日本とも治療方法が変わってきています。とくにここ数年の変化は顕著であり、それにともなって著効率も大幅に改善しています(図1)。

そこで本日は、IFN治療の経験が豊富な熊田、豊田両先生に、現在考えられる最善の治療法についてうかがいたいと思います。
 C型慢性肝炎に対するIFN治療ですが、数年前まで欧米と日本で治療法が少し異なるという状況がありました。欧米ではIFNの単独療法からリバビリンとの併用療法、さらにはPeg―IFNα―2b+リバビリンの併用療法というように変化してきました。一方、日本ではIFNの投与期間に制限があり、リバビリンとの併用も認められなかったため、欧米の治療成績に遅れをとる状況であったと思います。2001年から2002年にかけて、ようやくこれらの制限が撤廃され、治療のレベルアップが可能になってきました。日本でもIFNα―2bにリバビリンを併用すると、IFN単独に比べ有効率が改善することが、治験成績から明らかになり、昨年のDDW―Japan2003では、初回治療及びIFN再治療に対して併用療法を軸とする治療が推奨されました(図2)。

 まず、IFNα―2b+リバビリン併用療法の有効性についてですが、ご自身の経験からどのようにみておられますか。
熊田 治験データをみると、ジェノタイプlbで高ウイルス量(100KIU/mL以上)ですと20.3%という著効率ですが、当院の症例でもほぼ同じです。700KIU/mL以下と以上で若干違うのですが、700KIU/mL以下だと24〜25%、700KIU/mL以上で17%くらいの著効が得られております。また、ウイルスは消失しなかったけれども、トランスアミナーゼ(ALT)が正常化したものを含めると、24週の併用療法でもその有効率は40%まで上昇します。
豊田 私どもの施設も全国平均とほとんど同じです。ジェノタイプlbで高ウイルス量の症例ですと19.4%です(図3)。

500KIU/mL以上の症例に限ると15.4%でした。
 ウイルス量によって著効率が少し違うということですが、ウイルス量を考慮して治療方法の選択をしておられますか。
熊田 高ウイルス量の症例は、現状ではIFNα―2b+リバビリンの併用療法を第一選択にしています。ウイルス量がそれほど高くない場合、たとえば500KIU/mL以下の症例もIFNα―2b+リバビリン併用療法が第一選択ですが、高齢者や種々の合併症がある場合は、IFN単独療法を行う場合もあります。
 ジェノタイプ1型の高ウイルス量以外ですと、今のところIFNα―2b+リバビリン併用療法が保険で使えるのは、例えばIFN未治療症例のジェノタイプ2型の高ウイルス量になりますが、IFNα―2b+リバビリン併用療法の治療効果はどうでしょうか。
豊田 ジェノタイプ2型の高ウイルス量ですと、2aでは75%、2bは症例数が7例しかありませんが、4例が著効になっており57.1%、両方合わせて71%の著効率です。
 我々のところでも、1型の高ウイルス量以外では86%の著効率なので、低ウイルス量に対する制限がなくなれば、もう少し使えるかもしれません。

期待される48週の併用療法

 ジェノタイプ1型の高ウイルス量がIFNα―2b+リバビリン併用療法の第一ターゲットになると思いますが、問題は、従来の治療法より有効率は改普したけれども、まだ十分とはいえないことです。ジェノタイプ1型の高ウイルス量でも、24週の治療終了時には90%近いウイルス陰性化率が得られます。ところが、その後に高率に再燃が起こり、最終的な有効率が低下します。今の保険医療制度ではIFNα―2b+リバビリン併用療法の投与期間は24週となっていますが、どういう対策が可能でしようか。
熊田 決め手といえる方法はないのですが、IFN単独療法であれば長期投与が可能なので、24週の併用療法のあと、IFNの単独療法をおこなっています。ジェノタイプlbで高ウイルス量の場合、併用24週時点でのウイルス陰性化率は70〜80%であり、そこでやめてしまうと再燃して20%台まで下がりますが、さらに続けてIFN単独療法を続けると40%台でくいとめることができます。IFNα―2b+リバビリン併用療法で、たとえば4ヵ月目に陰性化するような症例は、IFN単独療法の期間を半年でなく、もう少し長くするようにしています。ウイルス陰性化の時期を参考にして、追加のIFN単独療法の期間を決めています。
豊田 私もウイルス陰性化時期を重視しています。私の施設では、24週併用療法で8週目以降に陰性化した症例から著効例が出ていないので、8週目以降に陰性化した場合、その後半年間、可能な症例についてはIFN単独療法をおこなっています。
 さて、わが国でも単独ではありますがPeg―IFNの48週間投与が保険診療で可能になりました。しかしながら、2002年にFriedらがNew England Journal of Medicineに発表したように、やはりリバビリンを併用しないと著効率の向上は期待できないようです。我が国のPeg―IFN単独試験の成績でも48週間投与しても残念ながら従来型のIFN単独療法とそれほど変わらない成績でした。
 Peg―IFN製剤には現在2種類のものがあり、リバビリンとの併用試験が進められていますが、この2種類のPeg―IFN製剤では投与方法が異なっています。一方はFix Doseで、もう一方は患者さんの体重により投与量を調節する方法です。欧米と異なり日本人は全般的に体重が軽いために、このことが有効性と安全性の面でどのように影響するか、今後慎重にみていく必要があろうかと思われます。いずれにしましても、わが国でもPeg―IFNとリバビリン併用療法が標準的治療となる時代がまもなく到来するでしょう。
 一方、Peg―IFNα―2b+リバビリンとIFNα―2b+リバビリン48週間併用療法の比較試験も終了しましたが、IFNα―2b+リバビリン48週間併用療法の有効率については両先生のところでは如何ですか。
熊田 ジェノタイプlbで高ウイルス量における初回治療の48例を対象に試験を行いました。その結果、48週の著効率はIFNα―2b+リバビリン併用療法では40%でした(図4)。

豊田 私のところは全部で30例に試験を行いましたが、48週での著効は14例(46.7%)でした。ウイルス陰性化時期との関係をみてみると、48週併用療法では12週目にウイルス陰性化した症例でも多数で著効が得られることがわかります(図3)。
 全国の成績では、48週のIFNα―2b+リバビリン併用療法で44.8%でした。今後、ジェノタイプ1型で高ウイルス量については、48週の併用療法が最前の治療法になっていくのは確実です。
熊田 試験成績をみると、無効例でも併用療法で約2割強が著効に移行していますから、治せるものはまず治すということで、再投与症例の場合、IFNα―2b+リバビリン併用療法の48週投与を行うべきだと思います。

早期のヘモグロビン値、リバビリン血中濃度に注意

 ただ、48週投与は有効ですが、副作用の懸念もありますね。併用療法でとくに注意が必要なのは貧血かと思いますが、貧血が起こったときにどう対処されますか。
豊田 リバビリンの量を調節することで対処しています。私のところでは、併用療法を実施した95例のうち、減量または中止したのは22例ですが、ほとんどが8週以内、さらにその3分の2は4週目で減量もしくは中止しています。ですから、4週よりもっと早い時期、2週目くらいのヘモグロビン値の変化やリバビリンの血中濃度を参考にして用量の調節をしています。
 どの程度ヘモグロビンが下がったら、減量しますか。
豊田 4週目減量例と8週目減量例でみると、前者の治療前のヘモグロビン値は13g/dL前後です。しかし、8週目減量例のヘモグロビン値は非減量例と比べほとんど差がありません。ですから、4週目での減量例は、治療開始時のヘモグロビン量が少ないために起きているのだろうと思います。一方、8週目減量例は、4〜8週目のリバビリンの血中濃度が上がり過ぎたために、減量にいたったのではないかと思います。
 治療前のヘモグロビン値と、治療後2〜4週目の動きをみて決めるということですね。
豊田 投与前値からのヘモグロビンの低下量が投与開始2週で1g/dL未満であれば、まず減量になる例はありません。2g/dL以上の低下になると、7割前後が減量あるいは中止になります。間題はその中間の場合ですが、このグループにおける減量の頻度は約30%です。逆に言えば70%は減量しなくてすむわけですから、判断はむずかしいのですが、その時点でのりバビリンの血中濃度や年齢を参考にして決めることになります。
熊田 私はとくに年齢を重視しており、60歳を越える場合はリバビリンの初期用量を600mgにしています。それから、ヘモグロビン値が15g/dLを越えていればいいのですが、14g/dL台の人に関しては、11g/dLになった時点で減量を開始しています。治験プロトコールでは10g/dLで減量することになってますが、そこまで待つと中止に追いこまれる危険性が高いので、早めに減量しています。このほうが治療を継続できる症例が増えると思います。
 私も同じです。やめるよりは減量で最後までいきたいということで、11g/dLになったら減量しています。それから、一時、脳出血が問題となったこともありましたが、これまでの疫学データをみると、投与例と同じ年齢層の脳出血の頻度とほとんど差がないようです。糖尿病や高血圧を合併している場合は注意が必要だと思いますが、どうでしょうか。
熊田 やはり高齢者で糖尿病があり、高血圧があるという場合は、もともと脳卒中のリスクが高いわけですから注意が必要です。IFNα―2b+リバビリン併用療法を行うにしても、糖尿病、高血圧を十分にコントロールしたうえで、必用な場合はリバビリンの減量を早めに行うべきでしょうね。
 糖尿病と高血圧をコントロールしておけば、大きな問題は生じませんか。
熊田 コントロールがきちんとされていれば、大丈夫だと思います。糖尿病については、IFNやリバビリンで治療しているうちに悪化する例がありますが、経過をきちんとみていれば対処できます。

高齢者に対するIFN治療

 日本のC型慢性肝炎の大きな特徴は、欧米に比べ高齢者が非常に多いことですが、高齢者を対象にIFN治療をおこなう場合、どういう点に注意しておられますか。
豊田 リバビリンの減量が必要になるのは、やはり高齢者が多いですね。私のところでは、早期からリバビリンの血中濃度をモニターしていますが、2週の時点で2000ng/mLを超えた症例が20例です。60歳未満と60歳以上が各10例でしたが、60歳以上では全例が8週以内に減量したのに対し、60歳未満で8週以内に減量したのはわすか1例でした(図5)。

60歳以上の患者で2週時にリバビリンの血中濃度が2000ng/mLを超えた場合では、早めに減量するほうが良いかもしれません。このように高齢者では副作用のリスクが高いので、ヘモグロビン値とリバビリン血中濃度を細かく追跡し、減量の時機を逸しないようにすることが必要です。
 ただ高齢者の発癌を抑制するためには、極力ウイルスを排除したいということがあります。私たちの施設で65歳以上の症例について解析したところ、発癌抑制効果においては再燃例と無効例の間に有意な差がないということがわかりました。つまり、高齢者では著効にまでもっていかないと予後の改善が期待できないのです。
熊田 できればウイルスを排除したほうがいいに決まっていますが、どのくらいの率で排除できるかが問題です。ですから、ジェノタイプ2aの場合は比較的排除しやすいで、多少高齢でもしっかり治療をして排除したいですね。しかし、ジェノタイプ1bで高ウイルスの場合、それも70歳以上となると成功の確率は低く、副作用のリスクも高いので、24週のIFNα―2b+リバビリン併用療法は避けるべきだと思います。
 70歳以上だとちょっと難しいと思いますが、60歳代の場合はどうですか。
熊田 私の場合、65歳まではIFNα―2b+リバビリン併用療法を第一選択にしていますが、65〜70歳の人に対してはケースバイケースです。本人の治療意欲と安全性を考慮して決めています。IFN単独の長期療法を選ぶこともあります。
 IFN単独の長期療法の場合、どのくらいの期間投与されますか。
熊田 65歳以上で線維化がF3ステージまで進んでいる状態であれば、半永久的に継続します。65歳以下でIFNα―2b+リバビリン併用療法が無効だったというケースに対しては、最低2年間治療し、そこでいったん中止しますが、再燃したら、また治療を開始します。
 C型慢性肝炎に対する治療について、IFNα―2b+リバビリンの併用療法を中心にお話をうかがいました。間もなくわが国におきましてもPeg―IFN+リバビリン併用療法が標準的治療になるでしょうが、更にPeg―IFNの安全性が確立して単独長期投与などの選択肢が増え、治療効果がより一層改善されるのではないかと思われます。今後の治療の進歩に期待しつつ、座談会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

この稿は、日経メディカル2004年3月号より許可を得て掲載しました。

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